植物に含まれる毒の成分
植物に含まれる毒の成分には色々な種類があり、人や動物が触れたり摂食したりすると炎症や食中毒症状(痙攣、嘔吐、下痢などの症状)を起こし、時には死に至ることもあります。しかし、全ての自然毒が猛毒ではなく、苦味や酸味を感じる程度の毒がある植物も少なくない。毒の成分が含まれる植物を加工し無毒化や毒のある成分を除去あるいは弱めることによって、食用・薬草として利用されるものもある。例えば、イチョウ(ぎんなん)やウメ、ジャガイモ、ワラビのように、毒がありながら処理法によって食料とされる植物もある。薬草(薬用植物)のように、古くからその有効性がみとめられ薬用として利用されてきたものも少なくない。ただし、薬草であっても経験や理論によって見いだされた用法・用量を守らずに使うと毒となるので注意が必要です。多く植物を食料として見なした場合、致命的に強烈な毒性をもつ種はあまり多くはないです。しかし、食味として、苦かったり、渋かったり、不快感を与えたり、一時的に健康を損なったりと我々の健康を著しく損ない食料として適さない種類が非常に多い。植物も摂取者から逃避行動がとれないため、こうした「不味」は致命的な毒とはなり得なくとも、摂食を免れるための手段として化学防御が発達したものと考えられる。植物のなかでも食料としての価値がなく、特に毒の強い物質を有する種が有毒植物と呼ばれる。
主な毒がある植物の種類
トリカブト
トリカブトは、古来から抽出成分を塗布した毒矢が、狩猟や戦いに使われてきました。トリカブトを誤食した場合、死ぬこともあるので注意が必要な植物です。毒の主成分はアルカロイドであり、茎や根だけではなく花粉にも毒の成分があり、養蜂家は近くにトリカブトが自生していないか注意が必要。誤って食べると、嘔吐・呼吸困難、臓器不全などの症状が現れます。過去には、あまりにも毒が強いため口に入れてから数十秒以内に死亡した事例もある。平成24年4月、北海道の住民が家庭で、ニリンソウと間違えてトリカブトを採取し、食べたところ、おう吐、しびれ等の食中毒症状を呈し2名が死亡する事件が発生しました。トリカブトは、秋に枝分かれした茎の先に独特な兜状の花を咲かせる植物です。全草に強い毒があるアルカロイドのアコニチンを含有し、春に、食用野草のニリンソウなどと間違って誤食され、死亡事例も報告されていることから注意が必要です。
ドクセリ
トクセリは、七草粥として食されている春の七草の”セリ”によく似ており、同じような場所に生育することから、誤食による中毒者が後を絶たない種類の1つです。ドクセリは世界中に分布している植物で根の形状がわさびに似ている。しかし、ドクセリの根の部分に毒の成分が集中しており、誤って食べると中枢神経が過剰に刺激され、吐き気、腹痛、呼吸器障害、腎不全、不整脈、震え、発作などが起こり、最悪の場合死ぬこともあります。シクトキシンは非常に毒性が強いため、これを食べた牛がたった15分たらずで死亡したという報告も上がっているほどです。
ドクニンジン
ドクニンジンは、かつてギリシャで処刑に使われていた植物です。最も有名な犠牲者は、哲学者のソクラテスであり、彼はドクニンジンの杯をあおり、命を落とした。ドクニンジンには複数の毒が含まれているが、その中で最も人間に致命的なのがコニインである。ごく少量のコニイン(6~8枚の葉っぱ、あるいはごく少量の種、根)を摂取するだけで、人間は中枢神経が侵され、筋肉がマヒし、命を落とす。筋肉のマヒは、まず足元から起こり、徐々に体の上方へと広がっていき、最後には呼吸筋が麻痺して、呼吸困難に陥り死に至ることもあります。
ドクウツギ
ドクゼリ、トリカブトと並んで日本三大有毒植物のひとつで、沖縄を除く日本全国の山地や河川敷に自生しています。ドクウツギは、赤からピンク色の甘い実ができる。非常に美味そうであることから、子どもがこの実を誤食して死亡する事故が後を絶たなかったという話がいくつかの農村に残されている。ドクウツギに含まれる主な毒は、コリアミルチンで、誤って食べると痙攣、呼吸困難などの症状が現れます。ドクウツギは、実だけではなく根や葉にも含まれており、その毒は即効性があり、食べるとすぐに痙攣や呼吸困難を起こし、多量摂取すると死に至ることもあります。
ヒガンバナ
ヒガンバナに含まれる毒は、はアルカロイドです。 誤ってヒガンバナを食べると、吐き気、下痢、麻痺、 などの症状が現れます。ヒガンバナは、花が無いとノビル等に似ており、誤って食べて死亡した事例もあります。ヒガンバナは、モグラを抹殺したい農家によって植えられる
ケースもあるが、効果の程は謎であるらしい。
イヌガラシ
イヌガラシは、トリカブトよりも死亡者数が多い植物である。見た目が山菜のギョウジャニンニクと酷似しているため、よく誤食されている。毒の成分はコルヒチンと呼ばれるもので、皮膚感覚がマヒし、重症化すると呼吸困難に陥って死ぬ。これまで、2007年に50代の新潟県男性、2014年に70代の静岡県男性、2015年に山形県男性が、いづれもギョウジャニンニクと勘違いして食べ、死亡している。
トウアズキ
トウアズキは、インドネシア原産のつる植物であり、その種子が鮮やかな赤色で美しいことから、装飾やマラカスの玉として利用されてきた植物です。しかし、この種子には強力な毒のアブリンが含まれている。その毒は青酸カリの1万倍である。アブリンは、細胞レベルでの機能阻害であり、タンパク質合成を行うリボソームを不活性化し、細胞を死滅させる。実際の症状としては、発熱などの風邪に似た症状が出た後、臓器が機能を失い死に至る。
ハシリドコロ
ハシリドコロの毒は、アルカロイドで、主に根茎と根に毒性が強く、誤って食べると嘔吐や散瞳、異常興奮などの症状を起こします。 誤ってハシリドコロを食べると錯乱して走り回ることから、この名前がついたらしい。
ハシリドコロは、新芽がふきのとうに似ているので間違って食すケースが後を絶たない植物の1つです。平成27年4月、ハシリドコロを採取し家庭で食べたところ、寒気、ふらつき、ろれつが回らない等の食中毒症状を呈する事件が発生しました。ハシリドコロは、根茎が肥大し葉は無毛で柔らかい多年草で、有毒アルカロイド(ヒヨスチアミン、スコポラミンなど)を含有しています。フキノトウやギボウシなどの植物と間違えやすいことから注意が必要です。
キョチクトウ
キョウチクトウは、美しい花を咲かす低木であるが、その毒性はあなどれない。キョウチクトウの毒は、葉や花、果実、根、そして周辺の土壌、燃した煙にも、心不全などを引き起こす強心配糖体が含まれている。誤ってキョウチクトウを食べると疝痛、下痢、頻脈、運動失調、食欲不振などの症状が現れる。
家畜の餌にキョウチクトウを誤って混入し9頭の牛が死亡した事例もある。(また、フランスでは、キョウチクトウをバーベキューの串に使い死者が出た事例もある。
腐葉土にしてもキョウチクトウの毒の成分は1年近く消失せず、注意が必要な植物です。 学校の周りに植えられている事が多いのが謎。
リンゴ・マンチニール
リンゴ・マンチニールは、 リンゴとよく似た果実が実る植物ですが、最も危険な植物の1つと言われています。マンチニールが危険な植物と言われるのは、その全てに猛毒を含んでいるからである。樹液にはアレルギー性皮膚炎を起こす毒のボルボール、果実には下痢や吐き気をもたらす毒のアルカロイドが含まれている。樹液の場合、雨水に溶け出たものが皮ふに触れるだけで激痛におそわれるという。樹液では死なないが、果実を食べた場合には致命的になりうる。その強力な毒性から、スペインでは「死の小リンゴ」と言われ、恐れられている。
スズラン
スズランは、鈴のような可愛らしい花を咲かせる植物だが、その見た目によらず、38種もの有毒な強心配糖体を含んでいる。毒の強さは青酸カリの15倍にも達する。ズズランは、草全体が毒だが特に花に毒の成分が多く含まれる。
誤って食べると、痙攣,蹌踉,麻痺,呼吸困難、蛋白尿,頻尿などの症状がある。北海道では、山菜の王様として知られるギョウジャニンニクと良く似ているため、誤食して死亡するケースが報告されている。生け花にした時の水にも溶け出すので注意が必要です。平成21年3月、ニラと間違えてスイセンの葉を採取し、食べたところ、吐き気、しびれ等の食中毒症状を呈する事件が発生しました。スイセンは、冬から春にかけて葉の間から花茎をだして、臭気のある花を咲かせる多年草です。ニラに比べ株元の茎は太く、葉についても幅が広く、厚く、全体に大きいです。ニラと混同しないように注意が必要となります。
チョウセンアサガオ
チョウセンアサガオは 花がトランペットの形状をしていることからエンジェルストランペット(天使のトランペット)とも呼ばれている。開花すると、最大で長さ50cm、幅は30cmに達する。可愛らしい名前を持っているが、その毒は非常に恐ろしいです。チョウセンアサガオを食べると幻覚や急性痴呆などの症状が現れ、最悪の場合死に至るのである。毒の成分であるヒヨスチアミンであり、誤って食べると麻酔、痙攣作用があり、江戸時代には
麻酔薬として使われた事がある。オウム真理教が、信者を洗脳する時に使う 薬として、利用された黒歴史がある。
オオミフクラハギ
キョウチクトウの仲間で花の形がよく似ている。ケルベリンという毒の成分が含まれており、心筋中のカルシウムチャネルの働きを阻害し、不整脈を起こす。多量に摂取した場合は、死にいたる。また、オオミフクラギは、完全犯罪を目的とした凶器に利用されることがしばしばあった。それは抽出毒のケルベリンが、容易にスパイスへと偽装できる素晴らしい風味を持ち、そして多くの場合検死ではケルベリンが死因として見過ごされがちだからである。さらにフランスの毒物学者は、どの植物よりも人間を毒殺し、自殺させた植物だと結論づけている。インド・ケララ州に限っただけでも1989~1999年の間に、この植物が原因で500人以上が亡くなっているのである。
トウゴマ
トウゴマは、薬や石けんの材料などに使われるひまし油が採れることで有名である。だがその種子には、毒があり、その強さは世界一を認定するギネス世界記録で、「最も強い毒を持つ植物」と認定されるほどだ。トウゴマに含まれる毒の成分はリシンと呼ばれるもので、人の致死量は種4つから8つほど。種を食べると、喉と口が焼けるように痛み、強烈な腹痛と下血を起こし未治療では3~5日以内に死亡する。
ベラドンナ
ベラドンナの実は、ブルーベリーのように黒い熟し甘くて美味しいとされるが非常に強い毒がある。実際に子どもがブルーベリーと見間違えて誤食し、死亡する事故も起きている。葉っぱや果実、根にはアトロピンとスコポラミンという毒が含まれており、体中の筋肉をマヒさせて、最悪の場合死に至ることもある。また、ベラドンナに触れるだけでも、皮ふのかぶれや潰瘍を起こすことがあるので注意が必要な植物です。
マルバフジバカマ
マルバフジバカマを食べた家畜のミルクや肉を食べることで中毒症状を起すことがわかっている。これらを摂取し続けると中毒症状を起こす。マルバフジバカマに含まれる毒はトリメトルというもので、人が摂取すると震え、吐き気、腸の重病にかかり、死ぬこともある。マルバフジバカマによる中毒はミルク病と呼ばれ、19世紀頃アメリカで流行し、一度に数千人が命を落としたとされている。中毒で死亡した者の中には、エイブラハム・リンカーンの母であるナンシー・ハンクスもいた。
主な毒がある植物の種類
キノコ |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
ドクヤマドリ |
|
ニセクロハツ |
ニセショウロ |
ネズミシメジ |
ハイイロシメジ |
|
ヒメアジロガサ |
|
|
高等植物 |
アジサイ |
アマチャ |
イヌサフラン |
カロライナジャスミン |
グロリオサ |
クワズイモ |
コバイケイソウ |
ジギタリス |
ジャガイモ |
スイセン |
タマスダレ |
チョウセンアサガオ |
テンナンショウ類 |
ドクゼリ |
ドクニンジン |
トリカブト類 |
バイケイソウ |
ハシリドコロ |
ブルグマンシア |
ベニバナインゲン |
ユウガオ |
ヨウシュヤマゴボウ |
|
アマゾン人気販売商品
食中毒の基本について