赤痢による食中毒の症状と治療方法

赤痢による食中毒の症状と治療方法

赤痢とは、原因菌である赤痢菌に感染すると下痢など食中毒の症状を引き起こします。この菌による食中毒は、国内では少ないですが、発展途上国では発生しています。ヒトとサルのみを自然宿主とし、その腸内に感染する腸内細菌です。細菌学的には、グラム陰性通性嫌気性桿菌の腸内細菌科の一属(赤痢菌属)であり、通性細胞内寄生性菌に属します。感染すると数十回の下痢、粘液と血液の混じったイチゴゼリー状の粘血便が特徴ですが発熱は見られません。詳しくは、「食中毒の種類と特徴」を参照してください。

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赤痢菌の微生物学的な特徴

赤痢菌とは、グラム陰性通性嫌気性桿菌の腸内細菌科の一属(赤痢菌属)に属する細菌であり、大きさは0.5×1-3µmぐらいの棒状で、鞭毛を持たないため運動性がないです。運動性の有無の他、リジン脱炭酸を行わない点や、大部分がラクトースを分解しない点で、近縁の大腸菌やサルモネラとは生化学的に鑑別することができます。赤痢菌は、酸に対する抵抗性は比較的高く、胃酸による殺菌を受けにくく少量の菌でも発病することがわかっています。赤痢菌は、ヒトとサルのみを自然宿主として腸内に感染する腸内細菌の一種である。ヒトには主に汚染された食物や水を介して経口的に感染し発症します。赤痢菌は、主に腸管の上皮細胞の細胞内に感染する通性細胞内寄生性菌であり細胞内では細胞骨格のひとつマイクロフィラメントを形成するアクチンを利用して細胞質内を移動して隣接する細胞に侵入し感染を広げるという特徴を持ちます。赤痢菌が産生づる毒素は、1898年に志賀潔によって発見され、その名にちなんでShigellaという属名が名付けられた。赤痢菌属は、生化学的な特徴や抗原性の違いから、A~Dの4つの亜群に分けられており、これらがそれぞれ独立した種として扱われています。

  • A亜群: S. dysenteriae (志賀赤痢菌)
  • B亜群: S. flexneri (フレキシネル赤痢菌)
  • C亜群: S. boydii (ボイド赤痢菌)
  • D亜群: S. sonnei (ソンネ赤痢菌)
赤痢菌(顕微鏡写真)

アメーバ赤痢と細菌性赤痢の違い

細菌性赤痢とアメーバー赤痢の違い

原虫である赤痢アメーバにより発症する赤痢で、旧伝染病予防法では細菌性赤痢と同様に法定伝染病とされていました。しかし、現在では4類感染症に分類されています。赤痢アメーバはその名のとおり、組織を溶かす性質をもち、アメーバ赤痢やアメーバ肝膿瘍などの疾患を起こします。アメーバー赤痢による食中毒の潜伏期間は、数日から数ヶ月と言われています。感染すると腹痛と下痢を引き起こし、一日に数十回の下痢、粘液と血液の混じったイチゴゼリー状の粘血便が特徴です。発熱の症状は見られません。

発生する地域と時期

赤痢による食中毒は、国内ではあまり報告されていないですが、希に発生するとニュースなどになります。国内で報告される赤痢は、主に海外旅行や出張者が海外で感染し、国内へ持ち込むケースが多いです。特に衛生状態が悪い東南アジアへ渡航する際には、加熱していない食品や水を摂取しないことをお薦めします。細菌の1種である赤痢は、他の食中毒菌と同様に高温、多湿の環境を好み増殖をします。そのため、気温が高くなる夏場に感染する発生するリスクが高いと思われます。

赤痢菌による食中毒の症状

赤痢菌に感染すると1~7日(通常4日以内)の潜伏期後、腹痛、水様性下痢、嘔吐、悪寒を伴う発熱、全身倦怠感などの症状が現れます。赤痢菌による発熱は、1~2日間続き、重症例ではしぶり腹を呈し、膿粘血便のみを少量ずつ排出します。通常、S.dysenteriaeやS.flexneri は典型的な症状を起こすことが多いが、S.sonnei は軽度な下痢、あるいは無症状に経過することが多いです。下痢の症状は、他の食中毒の可能性もあり症状から食中毒を調べることができます。詳しくは、「食中毒の症状と種類」を参照してください。

赤痢菌の検査方法

赤痢菌による感染の確定診断は、糞便から菌の検出することで判断します。大便からは、DHL 寒天培地やマッコンキー寒天培地で分離する。Shigella はDHL 寒天培地やマッコンキー寒天培地上で、37℃1夜培養後、直径約1~2mm の無色、半透明、湿潤な集落を形成する。Shigella の迅速診断法として遺伝子診断がある。これは腸管侵入性に必須な大型プラスミド上の侵入性関連遺伝子群を、DNAプローブ法やそれらを標的としたPCR法で検出する方法である。PCR 法はDNA プローブよりも100倍も感度が高く、検体中(大便を含む)に10個のShigella が存在すれば増菌なしでも検出できると言われている。

赤痢菌と感染症法における取り扱い

細菌性赤痢による感染は、2類感染症であり、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る必要があります。報告のための基準は以下の通りであります。1つめとして、診断した医師の判断により症状や所見から細菌性赤痢に感染した疑いがあり病原体診断がなされたもの。2つめは、 臨床所見、赤痢流行地への渡航歴、集団発生の状況などにより判断します。 (鑑別診断)カンピロバクター、赤痢アメーバ、病原性大腸菌o-157等による他の感染性腸炎等

赤痢菌による食中毒の治療

赤痢菌による食中毒症状を治療するには、対症療法と抗菌薬療法があります。対症療法とは、強力な止瀉薬は使用せずに、乳酸菌、ビフィズス菌などの生菌整腸薬を併用します。解熱剤は脱水を増悪させることがあり、またニューキノロン薬と併用できない薬剤が多いので慎重に選択します。脱水が強い場合には、静脈内あるいは経口輸液(スポーツ飲料でよい)を行います。赤痢菌を治療する為の抗菌薬療法としては、成人ではニューキノロン薬、適用のある小児にはノルフロキサシン(NLFX)、適応のない5歳未満の小児にはFOM を選択し、常用量5日間の内服投与を行います。赤痢菌の治療終了後48時間以降に、24時間以上の間隔で2~3回糞便の培養検査をし、2回連続で陰性であれば除菌されたとみなします。赤痢による食中毒は、重症化することがありますので早めに病院に行くことをおすすめします。詳しくは、「食中毒を病院に行かずに治したい」で確認してください。

赤痢菌 食中毒の原因

原因菌である赤痢菌が非常に感染力が強く、少量でも体内に侵入すると感染するため注意が必要です。特に赤痢菌に感染した人の手指から食品が少し汚染され、そののまま加熱などの消毒をせず口から体の中に入ることによって感染します(経口感染)。また、小児では接触感染があります。主な赤痢菌の感染経路に飲食物がありますが、直接手指が触れる食品群(にぎり寿司等)から感染することが高く、さらに、生水の摂取による感染や、乳幼児がおもちゃ等を口に含んだりすることによる物品からの感染(二次感染)も報告されています。 詳しくは、また、食中毒の原因と種類(一覧)で確認してください。

食中毒の予防

赤痢菌による食中毒の予防する為には、感染経路を遮断することが非常に重要です。赤痢菌は、空気感染や接触感染する可能性は極めて低く、主に汚染された水によって感染が拡大します。その為、上下水道の整備や個人の衛生観念の向上(特に手洗いの励行)が感染予防する上では非常に重要になります。その為、衛生環境が整っている日本国内で発生することは少ないですが、国内で診断される赤痢患者の多くは、輸入例が大半を占めます。これは、赤痢菌に汚染されやすい地域で、生もの、生水、氷などを飲食したことで感染し国内で発症して診断されるからです。国内では、特に抵抗力が弱い小児や高齢者などの易感染者への感染を防ぐことが大切であります。

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