腸管出血性大腸菌O157による食中毒の特徴
病原性大腸菌の1種でもあるO157は、感染すると腹痛や激しい下痢などの胃腸炎症状を伴い、さらに血便などの症状が現れます。その為、腸管出血性大腸菌とも呼ばれています。特に抵抗力が弱い乳幼児や高齢者が感染すると腸管出血性大腸菌O157が産生するベロ毒素により血便、HUS(溶血性尿毒症症候群)、昏睡、さらには死亡するケースもあります。その為、乳幼児や高齢者が腸管出血性大腸菌O157の感染を疑う症状があった場合には、出来るだけ早く病院へ行き医師などの診察を受けることをすすめます。
腸管出血性大腸菌O157の細菌学的な特徴は、グラム陰性の桿菌で通性嫌気性菌です。腸管出血性大腸菌の中でもベロ毒素(Verotoxin=VT, またはShiga toxin =Stx)を産生するものをいいます。腸管出血性大腸菌O157とは、大腸菌の持つO抗原のうち157番目のものを意味し、抗原の種類と識別するための番号からなっている。腸管出血性大腸菌O157以外にも、O26、O111、128、O145などもある。しかし、腸管出血性大腸菌による食中毒の多くは腸管出血性大腸菌O157です。
腸管出血性大腸菌O157は牛の腸内にいる細菌
牛肉の生食もしくは加熱不十分が腸管出血性大腸菌O157食中毒の原因だといわれてきましたが、野菜が原因による食中毒が多く報告されています。以前から牛の腸内に存在している細菌であることは、わかっていました。その為、事態を重く受けとめた食肉流通団体では、食肉市場内で腸管出血性大腸菌O157などの食中毒菌の汚染が拡大しない様に対策を講じてます。しかし、腸管出血性大腸菌O157い感染した牛の多くは、症状が無く、血液検査をしなければ感染が確認できないために多くの課題もあるのも事実です。近年、野菜(特にきゅうり)が原因による腸管出血性大腸菌O157食中毒も発生しています。これは推測であり、考えられる可能性ですが腸管出血性大腸菌O157に汚染された牛の糞が入った堆肥を農家が使用し、土壌が汚染され、農作物まで汚染が拡大したと思われます。ある研究機関の報告によるとレタスの葉に付着した腸管出血性大腸菌O157は、約2週間以上生存しており保存温度が8度以下ではほとんど増殖はしないが、保管温度が12度を超える状態で3日間放置すると細菌数が100倍に増殖するとのことです。野菜は、清潔な食品で生食が可能であるという認識がある方が多いですが、最近では環境汚染なども拡大し決して安全な食品であるとは言い切れない時代になってきました。
腸管出血性大腸菌O157の潜伏期間
腸管出血性大腸菌O157に感染してもスグに下痢や嘔吐などの症状は現れません。感染してから症状が現れるまでの期間を潜伏期間といいますが、腸管出血性大腸菌O157の場合は、平均2日から7日と言われてます。これは、あくまでも平均値(参考値)であり、体調や体質によってスグ症状が現れたり、一般的な期間より長くても症状が現れない場合もありますので注意ください。腸管出血性大腸菌O157は、非常に感染力が強く、少量でも体内に侵入すると増殖しながら有毒物質であるベロ毒素を産生し、下痢や嘔吐などの症状が現れます。このべろ毒素は、大腸の粘膜内に取り込まれ、リボソームを破壊し蛋白質の合成を阻害します。そして、腸内細胞は、タンパク欠乏状態になり死滅し、細胞が破壊されると出血の症状が現われます。腸管出血性大腸菌O157に感染してから2日から3日程度で血液が混じった激しい下痢の症状が現われます。特に体力が無い子供や高齢者は、重症化するケースがありますので血便を伴う下痢が確認された場合には、躊躇せず病院に行き医師の診察を受けることをおすすめします。
症状は下痢・腹痛・血便
腸管出血性大腸菌O157に感染すると先ず下痢や腹痛の症状があります。これらの症状は、一般的な食中毒でもあり、この時点で腸管出血性大腸菌O157によるものだと特定するのは難しいでしょう。時間の経過すると腸内の腸管出血性大腸菌O157は増殖しながらベロ毒素が産生するため血便の症状が現れます。食中毒菌は色々な種類がありますが、血便の症状を伴うものは非常にすくないです下痢や腹痛と一緒に血便の症状があった場合には腸管出血性大腸菌O157の感染を疑いましょう。希に激しい下痢を繰り返すことで肛門周辺の粘膜が破損し出血することがあります。綺麗なティッシュペーパー(トイレットペーパー)で肛門付近が避けて出血したか確認しましょう。ただ、どうしても分からない場合には躊躇せず病院へ行き医師に相談してみてください。
HUS(溶血性尿毒症症候群)に注意を
腸管出血性大腸菌O157による食中毒の症状は、概ね数日から10日程度で回復する場合が多いです。しかし、抵抗力が弱い乳幼児や高齢者が感染すると血便、HUS(溶血性尿毒症症候群)となり、最悪の場合、意識不明や死亡するケースもあり注意が必要です。腸管出血性大腸菌O157が産生するベロ毒素によるHUS溶血性尿毒症症候群を発症するリスクは、10歳未満が7.2%と非常に高く、毎年死者が出ています。腸管出血性大腸菌O157による感染が疑われる場合は、早めに病院に行き医師による治療が早くから受ける事で症状を悪化も最小限に抑えることができます。しかし、腸管出血性大腸菌O157に感染し下痢や嘔吐など食中毒の多くの症状があっても軽い食中毒や食あたりだと思い病院に行かず自宅で安静にしていることが多いです。また、家庭にある下痢止め薬などの常備薬を服用し安静にしている方が多いですが、家庭にある下痢止め薬を服用する事で下痢の症状が治まる為、ベロ毒素も体外に排泄されず体内に吸収され症状が重症化することになるため絶対にお止めください。詳しく原因を知りたい方は、「食中毒の症状と種類」を参照してください。
腸管出血性大腸菌O157食中毒の検査方法
血便の症状があったら躊躇せず病院へ行き、医師の診察を受ける様にしてください。腸管出血性大腸菌O157の検査は、病院で検査することができます。まず、医師は、患者さんに血液の混じった下痢はイツからあったのか?質問をします。そして、最近、牛肉のタタキや焼肉など食べたか確認します。そして、同時に患者さんの便から病原体が検出されるか検便を実施します。また、同時に腸管出血性大腸菌O157が産生するベロ毒素が便に含まれているかを詳細に調べることで感染を確認することができます。腸管出血性大腸菌O157以外にもo-11、o-26などがあります。
腸管出血性大腸菌O157の治療方法
腸管出血性大腸菌O157による食中毒で下痢や嘔吐などの症状がある場合には、対症療法を中心に行います。まず、整腸剤など服用し、脱水症状にならないように輸液(点滴)を行います。脱水とは、体内の水分や電解質が失われた状態をいい、重度の脱水症状になると死亡することもあります。私たちの体の6割は、水分で構成されており、水分は体内のpHや体温の調整に非常に重要です。また、下痢と一緒に電解質も失います。電解質は、体内代謝を行う為に非常に重要な成分です。この電解質が欠乏することで体内代謝が円滑にできず体内の臓器が機能不全になります。その為、脱水症状を予防する事は非常に重要です。
投薬による治療方法
また、体内で増殖した腸管出血性大腸菌O157を殺すために抗菌剤(抗生物質)を投与します。投薬は、医師が症状などを総合的に判断し、服用する種類や量を決めます。腸管出血性大腸菌O157に感染した場合、できるだけ早い段階で抗菌剤を使用した方がHUS(溶血性尿毒症症候群)の発症リスクが軽減された報告もあります。これは、有効な抗菌剤が腸管出血性大腸菌O157を死滅させることによってベロ毒素の産生量が減ったと考えられます。小児の腸管出血性大腸菌O157治療では、ホスホマイシン(FOM)、ノルフロキサシン(NFLX)、カナマイシン(KM)を使用し、大人の腸管出血性大腸菌O157治療では、ニューキノロン、ホスホマイシンを使用します。腸管出血性大腸菌O157が体内で増殖しながらベロ毒素を産生することで腸内細胞を破壊するだけではなく、血球や腎臓の尿細管細胞を破壊し、溶血性尿毒症症候群(急性腎不全・溶血性貧血)を引き起こす事がありますので、入院させ症状が悪化しないか注意深く様子を見ます。もし、腸管出血性大腸菌O157が産生するベロ毒素による急性腎不全、溶血性貧血などの症状が現われたらこれらの治療も行います。
食事は消化の良いものがおすすめ
腸管出血性大腸菌O157に感染し下痢や嘔吐の症状が現れても数日が経過すると徐々に食欲が出てきます。食欲があるならば、食べたいものを食べさせるのが基本です。しかし、腸管出血性大腸菌O157による食中毒の症状により激しい下痢や腹痛を繰り返したことで腸の粘膜は荒れて消化吸収する能力も低下します。その為、最初は消化のいい食品を中心に摂取するようこころがけ、徐々に量をふやしましょう。胃腸に刺激になる食品(辛い、熱い、冷たい、硬い、油っぽい)はできだけ避ける様にしましょう。軽度な症状の場合は、自宅で安静することで回復します。詳しくは、「食中毒を病院に行かずに治したい」で確認してください。
腸管出血性大腸菌O157食中毒の予防方法
腸管出血性大腸菌O157による性食中毒の予防は、他の食中毒菌と同様に肉など食材の十分な加熱、食材の温度管理、肉や野菜などで使用するまな板を分ける、生野菜などはシッカリ洗浄することです。これは、食中毒予防の3原則「つけない」「増やさない」「殺す」の3点を守ることです。腸管出血性大腸菌O157も温度、湿度、栄養の3つの条件が揃うと増殖しますので、気温が上昇する初夏から秋にかけて注意する必要があります。しかし、腸管出血性大腸菌O157は熱に弱い性質がありますので、食材の中心温度75度1分以上しっかり加熱することで食中毒の発生リスクを軽減することができます。また、次亜塩素酸ナトリウム水溶液で腸管出血性大腸菌O157を殺菌効果も確認されています。加熱できない食材は、この方法が有効です。ただし、次亜塩素酸ナトリウムを使用して食材を消毒する場合には、濃度と浸漬時間を間違えないよう注意してください。 一般的な食中毒の予防方法について説明しています。詳しくは、「食中毒の予防」で確認してください。
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