病原性大腸菌の細菌学的な特徴
病原性大腸菌の細菌学的なグラム陰性の桿菌で通性嫌気性菌に属し、大きさは通常短軸0.4-0.7μm、長軸2.0-4.0μmだが、長軸が短くなり球形に近いものもいるます。感染すると下痢や嘔吐など胃腸炎症状が現れるものを病原性大腸菌といいます。さらに血便などの症状が現れるものはo-157など腸管出血性大腸菌に細分することができます。種類は、非常に多く、全ての種類が非常に危険な性質ではありませんがo-157みたいに感染するとHUS(溶血性尿毒症症候群)を発症し、さらに症状が悪化すると腎不全や昏睡さらには死亡することもある非常に注意が必要なものもあります。o-157以外に注意しなければいけない病原性大腸菌には、O-26、O-111、O-74、O-91、O-103、O-121、O-145、O-161、O-165、などがあります。
腸管侵襲性大腸菌(組織侵入性大腸菌)
腸管侵襲性大腸菌は、感染により経口伝染病の赤痢による食中毒に似た症状を起こします。症状は、散発的であり発生も希です。感染すると潜伏期間は~5日間(多くは3日以内)で、しぶり腹、血液、粘液、あるいは膿をまじえた下痢の症状があります。その他に、発熱、はき気、おう吐、けいれんなどの症状が現れることが多く、寒気、頭痛を伴うこともあります。これらの症状は、長引く場合もありますが多くは2~3日で治まります。分類上は大腸菌ですが生化学的性状は赤痢菌に似ていて、感染時の症状である下痢の発生機序も赤痢菌の場合と同様であることが明らかになっています。
腸管毒素原性大腸菌
腸管毒素原性大腸菌は、ヒトの腸管内で増殖しながら有毒物質であるエンテロトキシンなどを産生し、下痢を主徴とする急性胃腸炎を引き起こします。産生する毒素には、60℃・10分間の加熱で失活する易熱性毒素および100℃・30分間の加熱でも安定な耐熱性毒素(ST)の2成分があります易熱性毒素は、コレラ菌の下痢原毒素であるコレラエンテロトキシンと物理化学的、免疫学的性状が似ているだけでなく、下痢を起こす機序もコレラエンテロトキシンと同じであるといわれており、易熱性毒素、耐熱性毒素のいずれか一方のみを作るものと、両者を産生するものがあります。症状は、水様性の下痢を伴うことが多く、ひどい場合には、大便がコレラ患者のように ‘米のとぎ汁様’になり脱水症状を起こします。腹痛、おう吐を伴うことが多く、発熱はあまり起こりません。潜伏期間は、多くの場合~72時間ほどです。回復期間は、1~3日で回復する場合から10日以上と長引く場合もあります。熱帯や亜熱帯に旅行する人がしばしばかかる“旅行者下痢”の原因だといわれています。特に熱帯や亜熱帯に旅行する人は、決して生水や生の魚介類をとらないよう注意することが大切であります。
腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生大腸菌)
腸管出血性大腸菌は、1982年にアメリカで発生したハンバーガーを原因食とする食中毒の原因菌として分離され注目を集めた。感染による主な症状が血便と腹痛を主徴とする出血性大腸炎を起こすので、出血性大腸菌と名付けられた。o-157は有毒性成分でもあるベロ毒素を産生し、志賀赤痢菌の産生する志賀毒素に類似するため志賀毒素様毒素とも呼ばれている。症状は、腹痛と水様性の下痢で発症し、翌日に血便を呈することが多いようです。おう吐は少なく、発熱は37℃台と軽度です。潜伏期間は、一般的に3~5日ですが感染後10日以降発症した例もあります。平均8日で回復するとされていますが、一部の患者では臓などの障害を引き起こし重症化・遷延して死亡することもあります。特に小児や高齢者はHUSを発症する割合が比較的高く、重症化しやすいようです。
病原性大腸菌による食中毒の発生時期
病原性大腸菌は1年間を通じて発生しますが、細菌が増殖するのに適した夏場に多発する傾向があります。牛の腸内に存在する細菌であり、牛肉が病原性大腸菌に最汚染されやすい食材だと言われてきました。その為、牛肉を加熱せず食べるレバー刺やユッケなどが危険だと厚生労働省も注意勧告していましたが、病原性大腸菌の死亡者が絶えない為に平成24年より禁止となりました。レバー刺の禁止やユッケを販売する際には厳格な手順で調理しなければ販売できないルールとした為、発生件数は減少傾向であります。しかし、焼肉店で自ら調理して食べる際、加熱不十分により殺菌が不十分で病原性大腸菌による食中毒は発生しています。また、細菌では、野菜による病食中毒も報告されています。静岡市の花火大会では冷やし胡瓜が原因で食中毒事故が発生し、東京や千葉の高齢者施設では胡瓜を使った料理で死亡事故も発生しています。特に高温多湿の気候である夏場に病原性大腸菌による食中毒が多く発生していますが、冬の寒い時期にも暖房などで気温が高く保たれている場合など、条件が揃えば食中毒のリスクは高くなります。
病原性大腸菌の検査と治療方法
病原性大腸菌による食中毒などの感染が疑われた場合には、下痢や嘔吐などの症状の確認さらに検便検査を行い診断します。検便検査で検出された場合には、病原性大腸菌の種類の特定を行います。病原性大腸菌で最も知られているのがO157ですが、O11、O26などもあり特定を行います。種類によって治療方法が変わりますので、感染が疑われる場合には、医師による診察を受ける様にしましょう。症状が軽度な症状の場合は、自宅で安静することで回復します。詳しくは、「食中毒を病院に行かずに治したい」で確認してください。
病原性大腸菌による食中毒の原因と予防
病原性大腸菌食中毒の原因は、生肉の加熱不足が一番の原因だと思われます。富山で発生した焼肉店の食中毒では感染者が死亡し、焼肉店も倒産しました。その事件をきっかけに厚生労働省も牛レーバーの生食を禁止して以降、病原性大腸菌による食中毒の発生件数は大幅に減少しています。しかし、自ら加熱調理して食べる焼肉店が原因の食中毒は発生しています。その為、毎年10から20件程度の病原性大腸菌による食中毒事件が発生し、数名の方がお亡くなりになっています。最近では、牛肉以外の食品が原因による病原性大腸菌による食中毒が発生しています。特に注意しなければいけないのでキュウリによるもので、静岡市の安倍川の花火大会で露店が販売した冷やしキュウリによる食中毒では多くの方が感染しました。また、東京、千葉で運営している高齢者施設でもキュウリの和え物が原因で食中毒事件が発生し、お亡くなりになった方もいます。以前は、野菜は新鮮で清潔のイメージがありましたが、近年、土壌汚染などの影響により野菜が病原性大腸菌に汚染されている報告を聞く様になってきました。その為、給食など大量に料理する施設では、次亜塩素酸ナトリウムなどを用いてしっかり消毒することが推奨されています。 詳しくは、また、食中毒の原因と種類(一覧)で確認してください。一般的な食中毒予防同様です。十分な加熱をしましょう。
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