ウエルシュ菌 食中毒の症状・治療・予防のポイント - 食中毒辞典

ウエルシュ菌 食中毒 主症状は下痢や腹痛 数日で自然に回復

ウエルシュ菌による食中毒は、給食など大量調理施設で発生しやすいことから別名給食病とも言われています。ウエルシュ菌は、土壌など非常に身近な場所に存在しており、食品を仕入れた時点で既に汚染される可能性があります。ただ、熱には弱く、十分に加熱調理を行なえば食中毒を防ぐことができます。ウエルシュ菌に汚染され食品(食肉、魚介類、野菜、添加物・香辛料など)を調理や加工をする際、加熱を十分にせず、加熱終了後も急速冷却せず常温放置することで増殖し、汚染された飲食物を摂取することで下痢や嘔吐の症状が現れます。ウエルシュ菌の細菌学的な特徴は、酸素を嫌う嫌気性細菌であり、毒素産生のタイプによってA、B、C、DおよびE型の5つに分けられています。ウエルシュ菌による主症状である下痢等の症状が現れるのは、エンテロトキシン(下痢原性毒素)を産生するA型です。また、ウエルシュ菌は、栄養状態や環境が悪化すると加熱や消毒などに対し強い抵抗性を示す芽胞を産生し、一度作られてしまうと無毒化することが出来ない非常に厄介なものです。

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ウエルシュ菌の細菌学的な特徴

ウエルシュ菌を微生物学的に説明するとクロストリジウム属に属する嫌気性桿菌で主な生息場所は、河川、下水、海、土壌中など自然界に広く分布しています。また、ウエルッシュ菌は、ヒトを含む動物の腸内細菌叢における主要な構成菌の1つでもあり、少なくとも12種類の毒素を作り、α, β, ε, ιの4種の主要毒素の産生性によりA, B, C, D, E型の5つの型に分類されています。ウエルシュ菌は、一般にビフィズス菌などと対比され、臭い放屁の原因でもあり、グラム陽性非運動性偏性嫌気性であり、生体内または血清添加培地で増殖した場合、莢膜を形成し、一般に芽胞は形成されにくいのが特徴です。ウエルシュ菌が増殖しやすい温度は37℃前後で多くの毒素を産生します。ウエルシュ食中毒は、給食施設において発生件数が多いことから給食病ともよばれています。 ウエルシュ菌が産生するエンテロトキシンによる生体内毒素型に分類されます。芽胞が一旦高温処理される事で芽胞形成能が活性化され、同時に溶存酸素が減少すると共に競合する他の菌が減少し増殖の好条件が成立し、緩徐に冷却される間(至適増殖温度)に食品中で増殖する。毒素の摂取ではなく原因菌の1千万-1億個以上の摂取により、腸管内で菌の増殖と共に芽胞が形成され同時に毒素が産生され毒素により発症します。

ウエルシュ菌による食中毒|顕微鏡写真 ウエルシュ菌による食中毒|電子顕微鏡写真

夏場に多く発生

ウエルシュ菌による食中毒の発生がピークとなるは5~9月ですが、それ以外の時期も発生しています。カレーやシチュー、スープ、煮しめなどといった魚や肉および野菜を含む煮込み料理でウエルシュ菌による食中毒が多く発生しています。特に大きな鍋で作られた煮込み料理(カレーやシチュー)で煮沸により酸素が追い出され熱に弱い菌は死滅してしまいますので、ウエルシュ菌が増殖するのに都合が良い状態となるのです。加熱が十分ではなく一晩常温放置することで鍋の中心温度が43℃から46℃という比較的高い温度帯で10分間に1回という非常に早い速度でウエルシュ菌は分裂をします。その為、前日に調理した料理を大きな容器のまま冷蔵庫に一晩保管したものの、冷えるまでに長時間かかったためウエルシュ菌による食中毒が発生するケースが多いです。

主症状は下痢や腹痛

ウエルシュ菌による食中毒の症状

ウエルシュ食中毒の主な症状は、下痢や嘔吐です。体内に侵入したウエルシュ菌は、腸管内で増殖しながら芽胞を形成する時にエンテロトキシンを産生します。エンテロトキシンの作用により下痢・腹痛など症状があります。食品中でウエルシュ菌により産生された毒素を食品とともに摂取することによって起こる食中毒(ブドウ球菌、ボツリヌス菌など)に分類され、これらを食物内毒素型食中毒といいます。ウエルシュ食中毒の症状は、汚染された食品を摂取してから6~18時間後(多くは12時間以内)に現れます。最初、腹部の膨満感で始まり、下痢、腹痛が主な症状で、発熱、吐き気および嘔吐はほとんどありません。下痢の症状は水様性で2~6回程度みられますが、血便(粘血便)を呈すことはほとんどありません。しかし、極めてまれに粘血性の下痢を十数回起こす重症例もみられます。ウエルシュ食中毒の患者さんの多くは2日以内には回復しています。そのため症状が軽度ですので多くの場合、自宅で安静することで回復します。詳しくは、「ウエルシュ菌など病院に行かずに治したい」で確認してください。この食中毒で治療する薬(抗菌剤)は特にありません。似ている食中毒としてセレウス菌「下痢型」食中毒があります。この両者を症状から区別することは困難です。他の食中毒の可能性もある場合は、症状から食中毒を調べることができます。詳しくは、「症状と種類」を参照してください。

食中毒の検査方法

ウエルシュ食中毒を疑う患者さんの便や原因食品(または食品原材料)などから多数(1gあたりの菌数が百万~1億個)検出されること、さらにウエルシュ菌が同一の性状・血清型を示し、エンテロトキシンを産生することにより、ウエルシュ食中毒として診断されます。また、患者さんの便からウエルシュ菌や産生したエンテロトキシンを証明することも有効な診断法です。なお、類似した症状を起こすセレウス菌は、好気性菌であることからも区別は容易です。

ウエルシュ食中毒の原因

ウエルシュ食中毒の原因

ウエルシュ食中毒は、肉類、魚介類、野菜およびこれらを使用した煮物が最も多く大量調理で起きるケースが多く報告されています。他の食中毒と同様に飲食店、仕出し屋、および旅館などであり、提供される複合食品によるものが多いです。また、ウエルシュ食中毒は、学校などの集団給食施設による事例も比較的多くみられ、給食におけるカレー、シチュー、スープ、麺つゆなどのように、食べる日の前日に大量に加熱調理され、大きな器のまま室温で放冷されていた食品に多いのが特徴です。『加熱済食品は安心』という考えがウエルシュ食中毒の発生原因となっています。逆に、家庭での発生は他に比べて少ないのも特徴的です詳しくは、ウエルシュ菌ほか原因と種類(一覧)で確認してください。

ウエルッシュ食中毒の予防方法

ウエルシュ菌の食中毒しっかり加熱で予防

ウエルッシュ菌は、自然環境、ヒトおよび動物の腸管などに広く分布しています。食肉、魚介類など食品原材料中に比較的高率で汚染されていることが確認されており、十分に加熱調理した後は、すみやかに摂食するか冷却することが大切です。ウエルシュ菌は15~50℃で発育を示し、ほかの細菌に比べ42~45℃でもよく発育するので、保存は10℃以下または50℃以上で行う必要があります。その為、ウエルッシュ食中毒の予防は、短時間に20度以下まで冷却することが重要です。保存されていた食品は温め直しなどの再加熱(75℃で15分以上)をして食べる事が一般的な食中毒の予防ですが、ウエルッシュ菌の場合は芽胞が作られるため、再度加熱を無毒化することはできません。一般的な予防方法については、「食中毒の予防」で確認してください。

ウエルッシュ菌の食中毒 急速冷却で予防
  • スープなどを調理するときは空気を入れ込むように必ずよくかきまわす。
  • スープなどは、できるだけ底の浅い容器に入れ空気に触れるように保存する。
  • 冷凍肉は完全に解凍してから調理する。
  • 室温で放置しない。
  • 調理後は早めに食べる。
  • 保存するときはすぐに冷却し、冷蔵庫に保存する。
  • 保存後の食品は、食べる前に再度加熱する。

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