黄色ブドウ球菌による食中毒の症状・予防・治療・潜伏期間

黄色ブドウ球菌食中毒 特徴・症状・予防・治療方法

黄色ブドウ球菌は、食中毒を引き起こす原因菌の1種です。また、培養するとブドウの房の様に集り、黄色やピンク色のコロニーを作ることから名づけられました。これは、細菌を分類する方法が整理されてない時代に名付けられた名残りです。ブドウ球菌には、黄色ブドウ球菌表皮ブドウ球菌腐性ブドウ球菌の3種類があります。黄色ブドウ球菌は、私たちヒトの手指の傷口、鼻腔、腸管、外尿道さらに粘膜など幅広く存在していて、犬や猫などのペットからも検出される身近な細菌です。また、にきびや、水虫等に存在する化膿性疾患の代表的起因菌でもあります。黄色ブドウ球菌が増殖する際にエンテロトキシンという毒素を産生し、この毒素に汚染された食品や飲料水を摂取することで腹痛や下痢などの症状が現れます。黄色ブドウ球菌による食中毒を予防するためには、細菌を増殖させないために十分な過熱をすること、加熱後すぐに食べない食品は急冷させ冷蔵庫へ保管、手指に切り傷がある方は素手で食品に触れないなど基本的なことを厳守すれば発生を抑制することができます。その他の食中毒菌について詳しい情報を見ることができます。詳しくは、「食中毒の種類と特徴」を参照してください。

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黄色ブドウ球菌の特徴

黄色ブドウ球菌を顕微鏡で観察すると、ブドウの房のように複数の細菌が集団を形成しているのが特徴です。細菌学的な特徴としては、通性嫌気性のグラム陽性球菌であり、他の菌と比較すると高濃度 (10%) の食塩存在下でも増殖する特徴があります。そのため、カタラーゼ活性、ブドウ糖発酵性などの生化学的特徴を利用して分離・同定することができます。原因菌を同定する方法として、コアグラーゼと呼ばれるウサギ血漿を凝集させる酵素を産生するかどうかで決まり、ヒトの体表に生息してコアグラーゼを産生するものが黄色ブドウ球菌です。また、培地上で培養したとき黄色いコロニーを形成することから黄色ブドウ球菌の名前がつきました。以前は、黄色くなることで判断されていましたが、現在は色素産生の有無ではなくコアグラーゼ産生能で判別されています。黄色ブドウ球菌は、我々ヒトの手指や鼻の中に存在する常在菌です。特に手荒れや包丁で怪我をした部分を好み菌が増殖します。その為、手指に傷や怪我がある方が素手のまま「おにぎり」や「サンドウィッチ」を調理し、常温放置することで食品が汚染され食中毒となることがあります。黄色ブドウ球菌による食中毒は比較的早く(数時間)で、悪心、吐き気などの症状となり、徐々に腹痛や下痢などの症状が現れます。多くの場合は、数日で自然に回復することが多いです。

黄色ブドウ球菌

発生時期は夏場に集中

年間を通じて黄色ブドウ球菌による食中毒は発生しますが、特に夏に多発する傾向があります。(食中毒の発生状況を参照)高温多湿の環境が細菌の繁殖に適しているためだと考えられます。黄色ブドウ球菌は、手指の傷に多く存在しており、生食用(加熱をしない)の食材を素手で調理し、そのまま常温放置や加熱不十分により食中毒になるリスクは一気に高くなります。その為、手指に傷がある調理従事者は、手袋を着用し、素手では食材に触れない様に注意する必要があります。そして、十分に加熱をし、スグに食べない食品は急速冷却して冷蔵庫で保管する様にしましょう。これらを守ることで黄色ブドウ球菌による食中毒のリスクを抑えることができます。また、冬の寒い時期にも、暖房などで気温が高く保たれている場合など、条件が揃えば黄色ブドウ球菌の増殖が促され食中毒のリスクが高まります。

黄色ブドウ球菌の症状

黄色ブドウ球菌による食中毒は、潜伏期間が数時間(3時間から6時間程度が多い)で、悪心、吐き気などの症状が現れます。そして、時間の経過とともに腹痛や下痢の症状と胃腸炎症状が現れます。黄色ブドウ球菌による食中毒は、一週間から10日程度で自然に回復するため、特に重症な症状が無ければ自宅で安静にしていれば自然に回復します。これらの症状の原因は、黄色ブドウ球菌が増殖した際に産生する毒素(エンテロトキシン)によって起きます。この毒素は、100℃で30分加熱でも分解されないため、黄色ブドウ球菌を増殖させないことが食中毒予防の基本だと言ってよいでしょう。

また、黄色ブドウ球菌は、一般的に化膿させる原因菌ですが、コアグラーゼや腸管毒素の他にも多くの代謝産物である外毒素を産生することで、種々の疾患を起こします。毒素性ショック症候群毒素(TSST-1)はその名の通り毒素性ショック症候群を引き起こし、エクソフォリアチンは表皮剥脱を起こす外毒素で皮膚剥脱症候群を引き起こします。他に溶血毒素や白血球毒(ロイコシジン)、繊維素溶解素などの代謝産物があります。他の食中毒の可能性もある場合は、症状から食中毒を調べることができます。詳しくは、「食中毒の症状と種類」を参照してください。

黄色ブドウ球菌の検査

黄色ブドウ球菌による食中毒の原因を特定させる為、原因食品、糞便、吐物、拭き取り等の検査材料から原因菌を検出する作業を行います。そして、黄色ブドウ球菌が産生するエンテロトキシン産生性を調べ、コアグラーゼ型別を実施する必要があります。黄色ブドウ球菌による食中毒と判定するためには、分離された菌株が健康保菌者由来でないことを慎重に判断することが重要です。また、黄色ブドウ球菌は毒素型食中毒菌であり、原因食品から直接エンテロトキシンを検出できる場合もあります。原因食品からエンテロトキシを検出することが可能であれば、短時間に黄色ブドウ球菌による食中毒を決定することができます。

黄色ブドウ球菌 寒天培地

黄色ブドウ球菌の治療方法

黄色ブドウ球菌による食中毒の治療法はなく、一般的な補液と対症療法を行い経過をみます。黄色ブドウ球菌が産生した毒素に汚染した食品を早く排出させるために下痢止めは使用しません。黄色ブドウ球菌による食中毒の予後も良好で、数日から長くても1週間で回復します。軽度な症状の場合は、自宅で安静することで回復します。詳しくは、「食中毒を病院に行かずに治したい」で確認してください。

黄色ブドウ球菌 食中毒の予防方法

食中毒の原因は、おにぎりや弁当、サンドイッチやケーキなど、さまざまな食品が原因となります。これは、黄色ブドウ球菌による食中毒のほとんどが、調理する人の手から汚染されるためです。特に、調理する人の手や指に傷や湿疹があったり、傷口が化膿しているような場合は、食品を汚染する事で黄色ブドウ球菌による食中毒を発生させる確率がさらに高くなります。詳しくは、食中毒の原因と種類(一覧)で確認してください。

黄色ブドウ球菌による食中毒を予防するためには、手袋の着用、十分な加熱、急速に冷却し冷蔵庫に保管の3つがあります。黄色ブドウ球菌は熱に弱く、通常の加熱処理で死滅しますが、増殖の際に産生される毒素は熱に強く、加熱しても解毒されないのが特徴です。その為、黄色ブドウ球菌による食中毒のポイントは、菌をつけない、しっかり加熱をして菌を殺し、加熱後増殖しない様に急速冷却することです。黄色ブドウ球菌の予防としては、食品を扱う時は手指をよく消毒し、手指に化膿性疾患があれば食品を取り扱わないことが大切です。指先に切り傷などある方は手袋の使用は効果があります。黄色ブドウ球菌の汚染を受ければ、あらゆる食品が食中毒の原因になる可能性をもっています。食品を10℃以下に保つことで、黄色ブドウ球菌の増殖を抑えることも重要です。一般的な食中毒の予防方法について説明しています。

  • 手や指に傷がある人や手の荒れている人は、調理にたずさわらない。
  • 食品製造にかかわる人は、十分に手や指を消毒してから調理する。
  • 消毒した後は、衣服や他の場所を触らない
  • マスク、帽子、薄いゴム手袋などを着用して調理する。
  • まな板、包丁、ふきんなどはよく洗い、熱湯や漂白剤で殺菌する。
  • 調理後はできるだけ早めに食べる。 
  • 食品を室温で長時間放置しない。

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