カンピロバクターは焼き鳥店で多い食中毒、主な症状は発熱と下痢や腹痛

カンピロバクター食中毒の症状と治療方法

カンピロバクターは、サルモネラと同様に鶏、牛、ブタ、ヤギなどの家畜や犬などのの腸管内に生息しているため動物の糞から検出される細菌です。特に鶏肉からカンピロバクターの検出率は高く、鳥肉を生食する九州地方や焼き鳥店での加熱不十分による食中毒が特に多いです。細菌性食中毒は、全般的に減少傾向でありますが、カンピロバクター食中毒の発生件数は減少せずノロウイルスに次いで多い原因物質です。カンピロバクターは、少量の酸素がある状態(微好気)という条件で繁殖し、4℃以下の温度で長期間生存が可能です。また、カンピロバクターによる食中毒は、少量でも発病するため、飲料水などによる集団食中毒を発生する事があります。カンピロバクターの歴史は、1913年に流産をした牛から初めて分離され、ビブリオ様の菌であったため、当初は、ビブリオ・フィタスと命名されました。しかし、その後、ビブリオ属菌との化学的性状や遺伝学的性状の違いでカンピロバクターは新しい属に分類されました。カンピロバクターは、サルモネラ属の菌と同じようにニワトリやウシ、ブタ、ヤギなどの家畜やイヌなどのペットの腸管内に分布しているため、これらの動物の糞によって汚染された肉や水を介してカンピロバクターによる食中毒を起こします。カンピロバクターには10数種の菌種の亜種が含まれますが、カンピロバクター食中毒の原因となるのはカンピロバクター・ジェジュニー)とカンピロバクター・コリの2菌種があります。ここではカンピロバクターによる食中毒の症状と予防について説明しています。カンピロバクター以外の食中毒菌やウイルスについて詳しい情報を見ることができます。詳しくは、「食中毒の種類と特徴」を参照してください。

カンピロバクター食中毒の特徴

カンピロバクターは、グラム陰性でらせん状に湾曲した形態を示す真正細菌の一属の総称です。菌体は、長さ0.5 - 5µm、幅0.2 - 0.8µm程度の桿状であるが、全体がらせん状に1 - 2回ねじれたらせん菌であり、顕微鏡下ではS字状、またはカモメ状に観察される。芽胞を形成せず、菌体の一端または両端に一本の極鞭毛を持ち、運動性があります。微好気性または嫌気性で、酸素濃度 3 - 15% 及び 30 - 37℃の条件で増殖します。菌種によっては二酸化炭素や水素ガスを発育に必要とするものがあるが、至適条件は菌株により異なります。乾燥には弱いです。カンピロバクター菌は一般に動物の腸管、生殖器、口腔などに常在すし、現在、カンピロバクターは17菌種 6亜種 3生物型を確認されています。その中で食中毒を引き起こすものとして C. jejuni、 C. coliなどがあり詳しくは以下にまとめてあります。

  • カンピロバクター・ジェジュニ (Campylobacter jejuni)長さ0.5 - 5µm、幅0.2 - 0.4µmカンピロバクター・コリと共に、ヒトに胃腸炎症状を主とするカンピロバクター症を引き起こす。ヒトに感染するカンピロバクターの大半がこれである。続発的にギラン・バレー症候群を起こすことがある。家畜、野鳥、野生動物、ヒトを宿主とする。
  • カンピロバクター・コリ (Campylobacter coli)カンピロバクター・ジェジュニと同様の症状を引き起こす。ジェジュニと同じく、ヒトに感染して症状を引き起こすが、患者の糞便から検出されるのはまれである。家畜、野鳥、サル、ヒトを宿主とする。
  • カンピロバクター・フェタス (Campylobacter fetus)ヒトに感染すると、敗血症や心内膜炎、関節炎や髄膜炎を引き起こす。ウシ、ヒツジ、カメ、ヒトを宿主とする。

カンピロバクター食中毒の発生時期

細菌性食中毒の多くは、減少傾向でありますが、カンピロバクター食中毒は、事件数、患者数ともに増加傾向を示しており特に注意する必要があります。特にカンピロバクター食中毒に注意しなければいけない時期は、発生がピークとなる5~7月ですが、それ以外の時期も食中毒が発生しています。カンピロバクターは鶏肉に汚染されていることが多く、鶏肉を生食で食べる九州地方で食中毒の発生件数が高いです。また、飲食店では、焼き鳥の加熱不十分によりカンピロバクター食中毒が発生するケースが目立ちます。英国の調査によると市場に流通している約4割以上の鶏肉がカンピロバクターに汚染されている報告もあります。調理・加工段階から他の食材への汚染拡大防止や十分な加熱殺菌が食中毒の予防において重要になります。

カンピロバクター食中毒の症状

カンピロバクター食中毒による胃腸炎の潜伏期間は2~7日で、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛などの前駆症状があり、次いで吐き気、腹痛がみられ、その数時間後から2日後に下痢症状が起こります。下痢は、水様便ですが、粘液や血便もあり(小児では血便を伴うことが多い)、O157感染との見分けが難しいです。通常、発熱は38~39℃で、腸炎のほかに敗血症や関節炎、髄膜炎を起こす場合もあります。カンピロバクター以外の食中毒の可能性もある場合は、症状から食中毒を調べることができます。詳しくは、「食中毒の症状と種類」を参照してください。

カンピロバクター食中毒の検査

カンピロバクター食中毒を疑う場合は、検便を行うため便のサンプルを採取して、細菌を増殖させる(培養する)ために検査機関に送ります。しかし、菌の培養は完了までに数日間かかるため検査せず症状などから治療方針を決める事もあります。医師は通常、下痢を引き起こした細菌の種類を知らなくても有効な治療を行うことができます。細菌が同定された場合は、どの抗生物質が有効かを確認するための検査(感受性試験)を実施します。

治療方法

カンピロバクター食中毒の確定診断は、便の細菌検査によるカンピロバクターの検出で、抗菌薬投与前に便の検査を行います。 カンピロバクターによる食中毒は自然軽快する場合が多く、輸液や食事療法で大部分は治りますが、場合によっては適切な化学療法が必要です。軽度な症状の場合は、自宅で安静することで回復します。詳しくは、「食中毒を病院に行かずに治したい」で確認してください。

処方薬

カンピロバクターによる食中毒の第一選択薬は、エリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質、そしてホスホマイシンです。セフェム系抗生物質に対しては多くの菌株が自然耐性を示し、ニューキノロン系抗生物質に対しては耐性菌を誘導す場合があり、耐性菌も増加しているので注意が必要です。

カンピロバクター食中毒の原因

厚生労働省によるとカンピロバクターによる食中毒発生時における主な推定原因食品又は感染源として、鶏肉関連調理食品および調理過程中の加熱不足や取扱い不備による二次汚染等が強く指摘しています。2008年に発生したカンピロバクター食中毒のうち、原因食品として鶏肉が疑われるもの(鶏レバーやささみなどの刺身、鶏のタタキ、鶏わさなどの半生製品、加熱不足の調理品など)が60件、牛生レバーが疑われるものが11件認められています。また、欧米におけるカンピロバクター食中毒の原因食品として生乳の飲用による事例も多く発生していますが、我が国では牛乳は加熱殺菌されて流通されており、当該食品による発生例はみられていません。この他、我が国では、不十分な殺菌による井戸水、湧水及び簡易水道水を感染源とした水系感染事例が発生しています。詳しくは、また、食中毒の原因と種類(一覧)で確認してください。

カンピロバクターによる鶏肉への汚染

市販の鶏肉についてカンピロバクター汚染調査を行ったところ、カンピロバクター・ジェジュニが鶏レバー56検体中37検体(66.1%)、砂肝9検体中6検体(66.7%)、鶏肉9検体中9検体(100%)から分離されました。また、大規模食鳥処理場併設食鳥処理施設におけるカット鶏肉についてのカンピロバクター汚染調査の結果は、高い率で陽性でした。他の研究チームの報告でも鶏肉の汚染率は20~40%と高い感染率が報告されています。これは農場や食鳥処理場による鶏肉の汚染率のばらつきのほか、検査法による検出率のばらつきが反映されているものと思われます。仕入れた食材がカンピロバクターに汚染されている可能性も高いので食中毒にならない様に注意しましょう。

カンピロバクターによる牛肉への汚染

健康な牛の肝臓及び胆汁中のカンピロバクター汚染調査を行ったところ、カンピロバクターは、従来、胆汁には存在しないと考えられていましたが、胆嚢内胆汁236検体中60検体(25.4%)、胆管内胆汁142検体中31検体(21.8%)、肝臓では236検体中27検体(11.4%)が陽性であることが示されています。また、肝臓中のカンピロバクターの菌数は平均で10~55個/g(部位による)でした

カンピロバクター食中毒の予防

カンピロバクターは食材のなかでは鶏肉や牛レバーから最も高率に検出されるので、生あるいは加熱不十分の鶏肉や内臓肉を食べることは食中毒予防の観点から控えるべきだと思います。カンピロバクターは熱や乾燥に弱いので、調理器具は使用後によく洗浄し、熱湯消毒して乾燥が非常に重要です。また、カンピロバクターの汚染が多い食肉からサラダなどへの二次汚染を防ぐために、生肉を扱う調理器具と調理後の料理を扱う器具は区別すること、生肉を扱ったあとは手指を十分に洗浄することも重要です。また、カンピロバクターの予防では冷蔵庫内で、生の食肉と他の食品との接触を避けることも重要です。井戸水など未殺菌の飲料水を飲まないこと、小児ではイヌやネコなどの保菌動物への接触で感染することもあるので、便などに触らないなどの注意が必要です。一般的な食中毒の予防方法について説明しています。詳しくは、「食中毒の予防」で確認してください。

  • 食肉などを冷蔵庫に保存するときは、他の食品と分ける。
  • 食肉などは十分に加熱する。
  • 飲料水は、煮沸するなど、完全に滅菌してから飲む。
  • 調理の際は、必ず手を洗う