ボツリヌス菌食中毒、重症化すると死亡するケースもボツリヌス食中毒菌

ボツリヌス菌食中毒

ボツリヌス菌の正式名は、クロストリジウム・ボツリナムといいます。当初ソーセージやハムなどの保存肉製品による中毒者から検出されたことから、ソーセージの意味のbotulus から命名されました。ボツリヌス菌による食中毒は、ボツリヌス菌が腸管内で増殖する事で症状が起きるのではなく、ボツリヌス菌が産生されたボツリヌス毒素を誤って摂取することで起きます。ボツリヌス菌はA~F型に分類され、日本ではボツリヌス菌E型による食中毒が多く、アメリカではボツリヌス菌A型、ヨーロッパではボツリヌス菌E型によることが多いとされています。ボツリヌス菌の産生する毒素は数百gで人類を死滅させることができるほど強力な神経毒で、胃腸症状のほかに、末梢神経と結合して嚥下不能、呼吸筋マヒなどを起こし致死率は30~70%とされています。ボツリヌス菌食中毒以外には、傷口から侵入して起こる「創傷ボツリヌス症」や乳児がハチミツや土に混入したボツリヌス菌を摂取して起こる「乳児ボツリヌス症」などがあります。他の食中毒菌について詳しい情報を見ることができます。詳しくは、「食中毒の種類と特徴」を参照してください。

特徴

ボツリヌス菌は、クロストリジウム属の細菌であり、グラム陽性の大桿菌および偏性嫌気性菌に分類されます。ボツリヌス菌は、土の中に芽胞の形で広く存在しているため、土の中にいる殺人鬼と海外では呼ばれています。ボツリヌス菌は、酸素を嫌う嫌気性細菌であるためびん詰、缶詰、真空包装食品など酸素が含まれない食品中で増殖し、増殖しながら強い毒素をつくります。ボツリヌス菌は、芽胞が特殊な構造をしているため長時間煮沸しても死なず、致死率の高い恐ろしい細菌として知られています。また、ボツリヌス菌は、菌は毒素の抗原性の違いによりA-G型に分類され、ヒトに対する中毒はA,B,E,F型で起こることがわかっています。A、B型は芽胞の形で土壌中に分布し、E型は海底や湖沼に分布しています。ボツリヌス毒素の致死量は体重70kgのヒトに対しA型毒素を吸入させた場合、0.7〜0.9μgと考えられており、1gで約100万人分の致死量に相当する(ちなみに青酸カリは経口投与の場合5人/g)非常に強い毒性があります。自然界に存在する毒素としては最も強力な細菌と言われています。ボツリヌス菌は、世界中に分布し、世界各国でこのボツリヌス菌食中毒が発生しています。ボツリヌス菌の特徴は、芽胞は熱や消毒薬にも強い抵抗力をしめします。食品だけでなく、8か月以下の乳児の腸の中でも増殖します。

発生時期

ボツリヌス菌食中毒は、毎年発生するような食中毒の種類ではなく、発生しやすい時期はわかりません。細菌、日本において起きたのは2006年9月、2007年4月、2010年12月、2012年3月とバラバラな時期に発生しており季節との関連性は低いと考えられています。

症状

食物由来のボツリヌス菌食中毒の発症は、通常毒素の摂取から18〜36時間後で突然起きることが多いです。(ボツリヌス菌の潜伏期間は4時間から8日間といわれています。)ボツリヌス菌食中毒の症状は、悪心,嘔吐,腹部痙攣,下痢がしばしば神経症状に先行してあらわれます。特に神経症状は、両側対称性を特徴とし,脳神経に始まり下行性の脱力および麻痺がそれに続くのが特徴です。一般的なボツリヌス菌食中毒の初期症状および徴候として,口渇,複視,下垂,調節不能,瞳孔反射の減衰または完全な喪失などがあります。延髄麻痺の症状(例,構音障害,嚥下障害,発声障害,弛緩性の顔の表情)が発現します。ボツリヌス菌食中毒により嚥下障害は吸引性肺炎を来すことがあり、呼吸筋ならびに四肢および体幹の筋肉においては,衰弱が下降性に進行します。知覚障害は認められず,意識は通常清明なままである。発熱を欠き,脈拍は併発感染がなければ正常または緩徐を維持します。便秘は神経障害の発現後によくみられます。、ボツリヌス菌食中毒の主な合併症として,横隔膜麻痺および肺感染に起因する呼吸不全などがあります。他の食中毒の可能性もある場合は、症状から食中毒を調べることができます。詳しくは、「食中毒の症状と種類」を参照してください。

乳児ボツリヌス菌食中毒に注意

乳児ボツリヌス菌食中毒では,症例の90%において初期に便秘がみられ,次に脳神経に始まり末梢神経および呼吸筋へと進行する神経筋麻痺が起こります。乳児、ボツリヌス菌食中毒では、脳神経障害が典型例で眼瞼下垂,外眼筋麻痺,弱い啼泣,弱い吸引,咽頭反射の減少,口内分泌物の貯留,無表情などがあります。重症度は軽度の嗜眠および緩慢な哺乳から重度の緊張低下および呼吸不全まで様々です。この乳児、ボツリヌス菌食中毒のリスクが高いために乳幼児にはハチミツを与えないように注意が必要です。

検査

ボツリヌス菌食中毒による症状は、ギラン-バレー症候群,灰白髄炎,脳卒中,重症筋無力症,ダニ麻痺症,ならびにクラーレおよびベラドンナアルカロイドに起因する中毒と混同されることがあります。、ボツリヌス菌食中毒のほどんどの症例において,筋電図検査は高頻度反復刺激に対する特徴的な増強反応を示します。食物由来の、ボツリヌス菌食中毒では,神経筋障害のパターンおよび感染源の可能性のある食物の摂取が重要な診断の手がかりとなります。同じ食物を摂食した2人以上の患者の同時発症は診断が容易であり,血清中もしくは糞便中ボツリヌス菌毒素の確認,または糞便由来病原菌の分離により確定します。疑いのある食物におけるボツリヌス菌毒素の検出は感染源を同定します。創傷性、ボツリヌス菌食中毒では,血清中の毒素の検出または創傷の嫌気的培養によるボツリヌス菌の分離が確定診断となります。乳児、ボツリヌス菌食中毒は,敗血症,先天性筋ジストロフィ,脊髄性筋萎縮症,甲状腺機能低下,良性の先天性緊張低下と混同されることがあります。糞便中のボツリヌス菌毒素または菌体の検出が診断を確定します。

治療

ボツリヌス菌食中毒で最も注意しなければいけないのが,呼吸障害とその合併症です。進行性麻痺は,患者の肺活量が減少するにつれ,呼吸困難の徴候をみえにくくなります。呼吸障害には,挿管および機械的人工換気がいつでも利用可能なICUにおける管理が必要です。このような支持療法の改善により,死亡率は10%未満に減少している。経鼻胃管挿管が栄養補給法として選択されるが,それにより,カロリーおよび水分調整が容易となり,また腸の蠕動を刺激してボツリヌス菌を腸から排除することができます。また乳児における母乳の使用が可能となる。加えて,この方法は経静脈栄養に固有の感染および血管の合併症の可能性を回避します。軽度な症状の場合でも、自宅で安静することで回復を期待するのは厳しいです。早めに病院に行き医師の診察を受ける様にしてください。詳しくは、「食中毒を病院に行かずに治したい」で確認してください。

処方薬

医師の治療方針により薬が処方されます。

原因

ボツリヌス菌食中毒は、酸素のない状態になっている食品が原因となりやすく、 ビン詰、 缶詰、容器包装詰め食品、保存食品(ビン詰、缶詰は特に自家製のもの)を原因として食中毒が発生しています。 国内では、北海道や東北地方の特産である魚の発酵食品“いずし”による食中毒が、1997年頃までは報告されていましたが、最近では、 自家製の“いずし”がほとんど作られなくなり“いずし”によるボツリヌス菌食中毒もほとんど見られなくなりました。代わって、容器包装詰め食品(特に、レトルトに類似しているが、120℃4分の加熱処理がなされていないもの)、ビン詰め、 自家製の缶詰による食中毒が発生しています。容器包装詰め食品の中でボツリヌス菌が増殖すると、容器は膨張し、開封すると異臭がする場合があります。乳児ボツリヌス症の原因食品として、以前は蜂蜜がありました。1987年10月、1歳未満の乳児には蜂蜜を与えないようにと当時の厚生省が 通知を出して以降、蜂蜜を原因とする事例は減少しました。蜂蜜以外、原因食品が確認された事例はほとんどありませんが、東京都で発生した事例で自家製野菜スープが感染源と推定されたものがありました。詳しくは、また、食中毒の原因と種類(一覧)で確認してください。

予防

ボツリヌス菌の芽胞は土壌に広く分布しているため、 食品原材料の汚染防止は困難です。ボツリヌス菌食中毒の予防には、食品中での菌の増殖を抑えることが重要です。 一般的な食中毒の予防方法について説明しています。詳しくは、「食中毒の予防」で確認してください。

  • .容器包装詰加圧加熱殺菌食品(レトルトパウチ食品)や大部分の缶詰は、 120℃4分間以上の加熱が行われているので、常温保存可能ですが、これとまぎらわしい形態の食品も流通しています。「食品を気密性のある容器に入れ、 密封した後、加圧加熱殺菌」という表示の無い食品、あるいは「要冷蔵」「10℃以下で保存してください」などの表示のある場合は、必ず冷蔵保存して 期限内に消費してください。
  • 真空パックや缶詰が膨張していたり、食品に異臭(酪酸臭)があるときには絶対に食べないでください。
  • ボツリヌス菌は熱に強い芽胞を作るため、120℃4分間(あるいは100℃6時間)以上の加熱をしなければ完全に死滅しません。そのため、 家庭で缶詰、真空パック、びん詰、「いずし」などをつくる場合には、原材料を十分に洗浄し、加熱殺菌の温度や保存の方法に十分注意しないと危険です。 保存は、3℃未満で冷蔵又はマイナス18℃以下で冷凍しましょう。
  • 食中毒症状の直接の原因であるボツリヌス毒素は、80℃30分間(100℃なら数分以上)の加熱で失活するので、食べる直前に十分に加熱すると効果的です。
  • 乳児ボツリヌス症の予防のため、1歳未満の乳児には、ボツリヌス菌の芽胞に汚染される可能性のある食品(蜂蜜等)を食べさせるのは避けてください。

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  秋は毒キノコのシーズン誤食に注意

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