食中毒の概要
石川県は9月6日、同県七尾市の老舗旅館「加賀屋」で夕食を食べた男女15人が腹痛や下痢などの症状を訴え、うち7人から腸炎ビブリオが検出されたと発表した。10人が入院したが重症者はおらず、全員が快方に向かっている。加賀屋は、プロが選ぶ「日本のホテル・旅館100選」 加賀屋は明治39(1906)年に創業した人気旅館。全国の旅行業者が投票する「日本のホテル・旅館100選」では、接客や料理が評価され、36年連続で1位に選ばれている。 県によると、15人は富山県のほか、神奈川県など関東地方から訪れた20~80代。2日夜に刺し身など共通の食事をしており、県は旅館の主厨房を8日までの営業停止処分とした。 食中毒に関する詳しい情報は、食中毒の症状と種類を参照してください。
腸炎ビブリオ食中毒について
腸炎ビブリオによる食中毒は、気温が上昇する夏場に多く発生します。最低気温が15℃以上、海水温が20℃以上になると腸炎ビブリオは、海水中で大量に増殖する性質があります。海水温度が高い海域で取れた魚介類は、腸炎ビブリオ菌に汚染されていることが多く、漁獲後や流通過程、調理中などで常温に長時間放置することで食中毒になる可能性が高くなります。また、近年では、最近では東南アジアなどからの魚介類により、冬場でも腸炎ビブリオによる食中毒がみられます。
古くから腸炎ビブリオによる食中毒は、頻繁に発生しており、鮮魚を扱うホテルや旅館など大量に調理する施設で発生しています。日本では、多く発生していますが、欧米での発生件数が少ないのも特徴の1つです。これは、欧米に比べ日本は、鮮魚を食べる習慣があることが多く発生する背景にあるかと思います。また、腸炎ビブリオによる食中毒は、以前はサルモネラ菌と同様に国内で発生する食中毒の大部分を占めていました。しかし、冷蔵施設の普及や衛生意識の向上などもあり腸炎ビブリオによる食中毒発生件数は年々減少する傾向にあります。
東南アジアなどでも腸炎ビブリオによる食中毒は発生し、旅行者下痢症と呼ばれる輸入感染症の原因菌の一つであります。腸炎ビブリオ菌は約75種ある血清型のうち「O4K8」が1995年まで主流で、1996年から東南アジアで流行している「O3K6」に変わりつつあります。日本の感染症法において、腸炎ビブリオ菌食中毒は、五類感染症の定点把握疾患である感染性胃腸炎に含まれるため、指定された医療機関では発生後一週間以内に報告することが義務づけられており、これを通して日本国内の発生状況が監視されています。
症状
腸炎ビブリオによる食中毒の症状は、感染後10時間から24時間以内に症状が現れることが多いです。その為、加賀屋が提供した食事を摂取した平成28年9月2日の翌日である9月3日には、腹痛などの症状があったと思われます。(石川県によるプレスリリース情報が無かった為に発生時間を推定した。)腸炎ビブリオに感染すると激しい腹痛と下痢がおこります。特に腹痛はさしこむような激痛で、猛烈な苦しさがあるのが特徴です。また、激しい下痢がなんども続くため、脱水症状に注意が必要です。食中毒の症状と対処方法は、食中毒の症状と種類を参照してください。
治療
腸炎ビブリオの治療は、特に抗菌薬治療を行わなくても数日で回復します。その為、腸の動きを抑制する強力な止瀉薬は、菌の体外排除を遅らせるので使用しません。もし、下痢や嘔吐の症状により脱水症状などがある場合には、対症療法として輸液(点滴)を行います。発熱がある場合も解熱剤の服用により脱水を増悪させることがあるので使用する際には十分な注意が必要です。また、解熱剤とニューキノロン薬と併用できないものがあるので慎重に薬を選択すべきである。一般的には、腸内環境を改善させるために乳酸菌などの生菌整腸剤を使用し、腸内ビブリオが腸内での定着を防ぐ。抗菌薬を使用する場 合は、ニューキノロン薬あるいはホスホマイシンを3日間投与する。軽度な症状の場合は、自宅で安静することで回復します。詳しくは、「食中毒を病院に行かずに治したい」で確認してください。
原因
加賀屋で発生した食中毒は、平成28年9月2日の夕食で提供された刺身(推定) と考えられております。腸炎ビブリオは、魚介類が汚染されやすい食中毒菌です。その為、塩水を好みますが真水には弱い性質があります。その為、十分に真水で洗う事で食中毒を予防する事ができます。また、他の食中毒菌同様に十分に加熱しても殺菌することができます。腸炎ビブリオ食中毒は、以前は夏場に発生する食中毒の代表的なものでした。これは、クーラーや冷蔵設備も普及しておらず、衛生に対する知識も不十分であった為に食材の温度管理が不十分であった事が主な原因だと考えられます。今回の加賀屋の食中毒でも刺身用の食材の水洗いが不十分な状態で、食材の温度管理を怠った事で発生したと考えられます。
旅行会社の対応について
加賀屋において9月2日に宿泊された複数のお客様より嘔吐・下痢などの症状が発生しました。保健所の検査の結果、同館の一部の厨房が原因施設と判断され、該当厨房が6日から3日間使用停止となります。なお、加賀屋には近隣グループ施設も含め複数の厨房がありますので旅館は通常通り営業いたします。症状を訴えたお客様に当社のお客様はおりません。この度の情報により、9/6~8にご宿泊のお客様から取消の依頼があった場合はノーチャージにて対応いたします。(日本旅行の発表情報)
所見
加賀屋の食中毒は、腸炎ビブリオが原因との事で感染された利用者のみな様は非常に辛い思いをされたかと思います。腸炎ビブリオは、汚染されやすい魚介類を真水でしっかり洗い、常温放置せず冷蔵庫などでシッカリ温度管理をすれば発生は防げたかと思います。ホテルの規模が大規模化し、調理から料理を出すまでの時間がかかったり、調理人の驕りが衛生意識を低下させ食中毒を発生させたかと思われます。
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